クラバーは大音量のリスクを過小評価している

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若いクラバーの多くは、自分の聴覚に何が起こっているかわかっていない。大音量の場所にいることで、耳鳴りが起きたり難聴になったりする可能性がある。たいていのDJはそれを知っているので、特別な耳栓などで自分の耳を守っている。
Anne Gelfeiは、テクノをプレイするときいつも小さな黒いカバンを持っている。その中にはレコードやUSBメモリーではなく、シリコン製の耳栓1ペアが入っている。自分の耳のためだ。「スピーカーを抱きかかえるほど音楽を愛している人々もいるわね」とGelfeiは言う。彼女は夫のDavid Marlinoとともに7年前サン・パウロからベルリンに音楽のためにやってきた。二人でPET Duoというユニットをやっている。DJとして6回Maydayパレードに出演し、ベルリンではTresorでプレイ。この春は東京でもプレイした。
Gelfeiは全身で低音を浴びるように聞くときの素晴らしさを語るが、その一方で彼女は、耳鳴りを経験したDJや、常に耳の中でベルやホイッスルが響いているDJ、あるいは難聴になってしまったDJたちのことも十分知っている。39歳の彼女は自分の耳を守ろうとしている。
社団法人DJ組合は、クラブでは100デシベル以下の音量でプレイすることを推奨している。これは(建築用の)空気ハンマーの音量に相当する。MerlinoとGelfeiによれば、120デシベルもよくある音量だという。大きなフェスでずっとスピーカーの前にいれば、もっと大きな音量を耳に受けることもある。人間の痛みの限度は130から140デシベルで、医者によればこの数値より上では聴覚の破壊が起こる。
クラブで大音量を聞いているのはDJではなくてお客さんたちだ。大型スピーカーは彼らの方向を向いているのだから。たいていDJ用にはモニタースピーカーがあって、彼らは自分でその音量を調整できる。そこでは音量表示もされている。音量調節は車を運転するときの速度調節くらい難しいのだ。また適応効果があって、クラブにいる時間が長ければ長いほど、音量を小さく感じるようになる。プロのDJたちのあいだでは、聴覚を保護する動きが広まっている、とGelfeiは言う。しかしお客さんたちは相変わらずそんなことは知らずにクラブに来ている。
DJとして定期的にプレイしていた人たちも騒音による負荷がもたらす結果について知らなすぎた、とCharité Berlin耳鳴りセンターのBirgit Mazurekは語る。耳鳴りとか騒音による聴力障害は元に戻らないものなのだと知ると、多くの患者はたいへん驚く。慢性耳鳴りの原因になることの多い騒音や爆音は、内耳の蝸牛にある様々な聴覚細胞を傷つけ、それは永続的に残る。多くの若者は聴覚保護をかっこいいと思わないのだ、とMazurekは語る。彼女はコンドーム普及のコピーのように「クラブやコンサートに来るのに耳栓なしなの?」などと言う。クラブの音量だったら、本来は空港従業員がつけているイヤーマフ(ヘッドフォン型の防音保護具)をつけたっていいくらいなのだ。
耳栓は音楽をこもった音にするのでクラバーの間では好まれないのだ、とPET Duoと一緒にやっているPatrick Gharapetianは考えている。オーダーメイドで耳に合わせたプロ用耳栓は音を劣化させることなく、高域、中域、低域を均一に下げる。フィルターは交換可能で、9から25デシベルの間で下げることができる。しかしオーダーの耳栓でなくても音に関しては、質の差は大きいとはいえ部分的には悪くない。装着感と試聴感に慣れるため2,3回試さねばならない。靴を新しくしたときと同じだ。長い目で耳を守ろうというのなら聴覚保護だけでなく、大音量に身をさらす時間のことも考えるべきだ。常に85デシベルの騒音がある職場は、うるさい職場だということになっている。そこで働く従業員はそこに8時間滞在して良いが、そのあと少なくとも12時間の休息をとらなければいけない。これが93デシベルだと、4時間で聴覚を損傷する。
成功しているDJには難しいことだがクラブ滞在時間を短くし、ライブとライブの間に十分な休息をとるのが理想だ、とAnne Gelfeiは言う。何より、耳栓を外して夜眠るときに耳鳴りが全くないのが一番いいことだ。



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